ジェラードの自伝の読書感想文、チャプター7。首位に立ち、見えてきた「優勝」の二文字。希望に心躍らせるファン、選手、そしてジェラード自身。ここまで来るのに多くの苦い思いを味わってきました。だかろこそ、皆あれほどまでに熱狂したのでしょう。
CHAPTER 7 首位を走る
アンフィールドへと向かうバスの中。道路には無数のファンの姿。どの顔も希望に満ち溢れています。皆、サッカーにとって単純だけど最も重要な事「勝利」を願い、選手達を後押ししています。
そんなファン達の姿を見て、感慨にふけるジェラード。
ファンはただ勝利をそして、タイトルを願えばいいだけのはずなのに、別の事に気を取られ、怒り絶望していた時期がありました。
ヒックス&ギレットによるデタラメな経営でクラブが破綻しかけた時期です。
タイトルを争うハラハラドキドキのリーグ戦ではなく、金の事ばかり考えるビジネスマンたちの駆け引き、挙句の果てには仲間割れを気にしなければならないというのは、やりきれませんね。
リヴァプールという街は決して裕福とはいえません。
一週間、汗水流して働いて、唯一の楽しみが週末の試合というファンも多いようです。
それなのに平日からクラブ内部のゴタゴタの暗いニュースばかり耳にして、肝心の試合も補強がママならず、低空飛行。なんとも不幸な状況ですね。
そしてそれはジェラードも。キャプテンだからという理由で、そういったゴタゴタに巻き込まれ、試合以外の事に気を揉まなければならない事が多かったようです。
スティーブン・ジェラードという稀代の名選手が、そんな下らない理由でキャリアの全盛期を無駄にしなければならないとは・・・憤りすら覚えます。
そんな暗い記憶もファンと共有しているジェラード。ファン達の明るい表情を、感慨深く受け止め、大一番、マンチェスター・シティ戦へ。
馴染みのメンバー達が躍動する、試合の描写は文字だけでも、手に汗握ります。
しかしそこに登場するメンバーの半数近くが今のチームにはいないという事には、切なさも憶えました。
アレン、グレン・ジョンソン、コロ、シュクルテル、そしてスアレス。
色々と複雑な思いはありますが、この章ではラヒーム・スターリングについても、特に行数を割いて触れています。
何度と無く仲間を見送ってきたジェラードですが、若くして才能を開花させ、そして後味の悪い形で去っていったスターリングに対しては、特に残念な思いがあるのかもしれませんね。
今さら何を言っても遅いけど、もうジェラードに寂しい思いさせるなよ・・・。
一方、シティには現在はリヴァプールの副キャプテンとして活躍する、ジェームズ・ミルナーが。
憶えてます。水色のシャツに袖を通し、ピッチに入ってくるミルナーを、胃が捩れるような緊張の中で見ていた事を。
本当に敵としてはイヤな選手でしたね。
試合はコウチーニョのゴールが決勝点となり、リヴァプールの勝利。
そして・・・
鮮明に覚えている人も多いことでしょう。
ジェラードの涙。円陣。
当時、リアルタイムでは、まさに気分は最高潮。これは優勝するチームだ!と確信したものですが、今となっては切ないですね。
その直後にはジェラードがファンと共有する、辛いけれど非常に大切な記憶、「ヒルズボロの悲劇」の25周年式典が執り行われました。
25周年。犠牲者の名誉を回復する道筋が見え、チームは優勝に向けて邁進中。希望に満ちた雰囲気の中での式典。
ここで出てくるYou’ll Never Walk Aloneの歌詞は一際美しく感動的です。
気持ちを新たにリーグ戦に臨むジェラード。チームは勝利を重ねていきますが、「あの日」はもうすぐそこまで近づいています。
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