【読書感想文】ジェラード自伝 その16

2017-11-15

だいぶ間が開きましたが、一章ごとに綴ってきたスティーブン・ジェラード自伝の読書感想文もついに最終章。
リヴァプールでの最後の数週間とともに、あのジェラードのキャリア最大の栄光「イスタンブールの奇跡」まで振り返る大変濃い内容。正にクライマックスです。

CHAPTER 16 リヴァプールを去った日

アンフィールドでの最後の試合を控えたジェラードに友人からある動画のリンクが送られてきます。
最終戦での観客、そして世界中のファン達に向けてのスピーチに関する提案のようです。

動画はある男が「俺は辞めない」と力強く宣言する映画のワンシーン。つまりジェラードも最後のスピーチで退団を撤回しろと。

ジェラちゃんは~リヴァプールを~やめへんで~

気の利いた冗談ですが、送り主は半分くらいは本気だったのではないでしょうか。多くのファンも最後まで嘘であってほしいと願っていたことでしょう。

アンフィールドでの最終戦。クリスタル・パレス戦。幸先よく先制するも、その後3失点。普通こういう試合って2-0くらいで綺麗に勝ってありがとーって感じになりそうなもんだけど、うまくいかないですね・・・それでも最後まで声援を絶やさないKOPは素晴らしい。

1-3の不甲斐ない敗戦。でもそれも関係無いですね。ありがとうジェラード。素晴らしいキャリアを讃えましょう。
クリスタル・パレスの選手達も次々に祝福に訪れます。
その中にはかつての戦友、マーティン・ケリーの姿も。もしかしたら、この時一番、スタジアムの中で一番気まずい思いをしていたのはケリーかもしれませんね。
ジェラードと同様、スカウサーでリヴァプールのアカデミー出身のケリー。本来であれば、リヴァプールの選手としてジェラードを送り出したかったことでしょう。それが相手チームとして、しかも勝ってしまった。複雑でしょうねえ。人生とは難しい。
ケリー、今もパレスで監督とか監督とか監督とか色々大変だと思うけど頑張れよ!

試合終了後のセレモニー。リヴァプールの選手は皆、ジェラードのユニフォームを着用。その中でもマリオ・バロテッリは見ものだったとジェラードは語ります。
結構、彼の事は気に掛けているようだし、根はいいヤツなんでしょうね、バロ。僕も戻って来て欲しいとは思わないけど、決して嫌いではないです。復活を祈ってます。バロンドール取れるといいな!

でもな、セレモニーでスマホいじってニヤニヤしてたのは結構イラっと来たぞ、バロちゃんよ!

泣きたくなるのを堪えながらのスピーチ。最後にKOP達への感謝を述べ、ジェラードのアンフィールドでの勇姿は見納めとなりました。

しかしリーグ戦はあと1試合、アウェイのストーク戦が残っています。

記者、スタッフ、両親・・・大勢の人たちとリヴァプールでの残された時間を噛み締める中、回想はあの夜へ。

イスタンブール。ACミランとのチャンピオンズリーグ決勝。

ラファエル・ベニテス監督のプランは大きく狂い、前半だけで3失点。落胆するロッカールーム。
あの時、試合を観ている側の絶望感も相当なものでしたが、選手達の困惑も相当なものだった事でしょう。それを当事者が語る。もの凄い生々しさを感じました。

前半は策に溺れたベニテスですが、後半は見事に修正。ジェラードが反撃の狼煙を上げると、僅か5分程度であっという間に同点に。
その後、多くの選手が足を痙攣させ満身創痍の状態ながらもミランの猛攻を凌ぎきり、3-3のままPK戦。

最後に蹴る予定だったジェラード。PK戦の推移を冷静に綴っていますが、当時はどんな心境だったのでしょうか。並のメンタルだったら、その場にいるだけで卒倒してしまう程の凄まじいプレッシャーだった事でしょう。
ジェラードの出番が回って来る前にPK戦は決着。リヴァプールの優勝。イスタンブールの奇跡です。

あの時の事を思い出すと、本当に何か奇跡的な力が働いていたのではないかと思います。ジェラードがゴールを 決めた時点でも1-3。あのミラン相手では十分に絶望的なのに、何故か行けると思ったんですよね。選手達もファンも。

試合終了後の歓喜、リヴァプールへの凱旋、祝賀会。夢のような回想が続きますが、そこから醒めると、とんでもない悪夢が・・・

リヴァプールでの本当の最終戦、アウェイのストーク戦は1-6の敗戦。何が起きたのか・・・本当に分かりません。出来れば忘れてしまいたい出来事ですが、スティーブン・ジェラードという英雄の最後の試合ですからね・・・これから何度も掘り起こされる事でしょう。受け止めるのには、まだ時間がかかるかもしれません。

チーム全体が打ちひしがれていますが、以前から計画されていた慰安旅行へと繰り出します。
部屋でくつろぐジェラードを訪ねてきたのはルーカス・レイヴァ。ジェラードにメッセージ付きの贈り物を渡します。ルーカスが去ると、ついに堪えきれなくなり涙を流すジェラード・・・

ルーカス!

アンフィールドを去る時も、最終戦の惨敗でも泣かなかったのに、ここに来て泣くとは。ルーカスの人柄あっての事でしょう。ジェラードもだけど、ルーカスも恋しいなあ・・・

夜の街に繰り出す一行。するとジェラードの携帯に着信が。相手はコロ・トゥーレ。代表戦があったため、旅行には行けなかったようです。コロと話すジェラードの横で仲間達が歌い始めます。あの有名なヤヤコロダンスですね。本人がいないのは不思議でしたが、こういう事でしたか。

旅行を終え帰宅。リヴァプールでの生活も残り僅か。しかし新加入の選手やコーチ人事が気になって仕方が無い様子。特にコーチ人事に関しては、自分に話が無かった事を恨むような記述も・・・未練タラタラじゃないですか。
しかし家族と共に過ごす静かな時間の中で、落ち着いたのか穏やかな気持ちでリヴァプールでのキャリアを振り返り、新たな旅立ちに思いを馳せ、そしてついに自伝は完結します。

月並みな表現ですが、山あり谷ありのリヴァプールでのキャリアでしたね。僕は2002年の日韓ワールドカップで海外サッカーに興味を持ち、マイケル・オーウェンがいるチームという事でリヴァプールを応援し始めました。
程なくしてオーウェンは移籍してしまいますが、ジェラードのお陰でファンを続ける事が出来ました。そしてイスタンブールの奇跡を目の当たりにし、好きなクラブはリヴァプールただ一つとなっていきます。
ジェラードとは年が近いこともあり、2002年以降の記述に関しては、あの頃はこうだったとか自分の人生を振り返りながら懐かしい思いで読み進めていきました。親近感を感じ、一方ではイスタンブールの奇跡、それを成し遂げたキャプテンが大学生だった自分とそう年が変わらない若者だったという事を思うと、途方も無く遠い世界の出来事のようにも感じます。改めて偉大なキャプテンですね。

ジェラードの退団が決まった時、リヴァプールのファンを続けていけるかどうか少し不安になりましたが、杞憂だったようです。ヘンド、スタリッジ、コウチ、ミニョレ、モレノ・・・ジェラードと共に戦った愛すべき選手達がいますからね。
そしてクロップが監督になり、マネ、サラーといった新たなスターも登場しました。さらにはジェラードが退団前から目にかけていたアーノルドを始めとする若い才能も台頭してきています。
今のチームも実に魅力的ですね。これからもずっとリヴァプールファンでいる事が出来そうです。ジェラードとの出会いは、正に人生を変えた出来事と言っていいかもしれません。ありがとう。

この自伝の出版から時は流れ、ジェラードは現役を引退しました。そして今はユースの監督。いつかは戻って来るのだろうと思っていましたが、こんなに早いとは。よっぽど恋しかったんでしょうね。
近い将来、ジェラードが育てた選手がトップチームで戦う日が来る事でしょう。そしていずれはジェラードがトップチームの監督に。

そう考えると、この自伝はまだ半分しか終わっていないのかもしれません。数十年後、ジェラードが指導者としてのキャリアも終える時、また新たな自伝が出版されるかもしれませんね。そしてその自伝には「プレミア制覇」の記述がありますよう。僕もその時もきっとリヴァプールファンを続けている事でしょう。

スティーブン・ジェラード。いつまでも応援しています。

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